【高加水バゲット】低温長時間発酵で作る|作りやすい捏ねないレシピ

クープが開いた黄金色の高加水バゲット

結論:家庭用オーブンでも“本格的な一本”は焼けます

バゲットは難しい、高加水となればなおさら――そう感じている方は多いのではないでしょうか…
確かに、バゲットはパン作りの中でも最難関のひとつ。

しかし、実は家庭用オーブンレンジでも、「捏ねない製法」と「低温長時間発酵」を組み合わせれば、外はパリッと中はもっちりの本格バゲットは十分に再現可能なのです。

今回は特別な設備がなくても、家庭用オーブンレンジの機能をフル活用して、本格的な高加水バゲットを成功させる全工程を、プロの視点で徹底解説します。

この記事が特に役に立つ方

  • 家庭でハードパンに挑戦したいが技術に不安がある方
  • 時間がなくてパン作りを諦めていた方
  • クープが開かない・ボコボコ穴の開いた断面にならない… と悩んでいる方

1. 高加水バゲットとは?その魅力と成功の鍵

高加水パンの定義とメリット

「高加水」とは、生地に含まれる水の割合(加水率)が高いことを指します。加水率とは「粉の重さに対する水の割合」のことで、パン作りの基本指標のひとつです。

一般的なバゲットの加水率は65〜70%程度ですが、このレシピでは78%(粉300gに対して水234g)という高い数値に設定しています。

特徴詳細
食感外側は薄くバリッと、内側はモチモチ・みずみずしい仕上がり
風味熟成時間が長い分、小麦本来の甘みと香りが引き出される
見た目大きな気泡(不均一な内相)ができやすく、ボコボコ穴の開いた断面になる
難易度生地がベタつくため、捏ねる代わりに「折り畳み」でグルテンを繋ぐ

加水率が高くなるほど生地は扱いにくくなりますが、その分風味・食感ともにクオリティが上がるのが魅力です。

なぜ「捏ねない」のか?

高加水の生地は非常にベタつき、通常の方法で捏ねることが困難です。そこでこのレシピでは、捏ねる作業の代わりに次の2つの手法を組み合わせます。

  1. オートリーズ(水和):粉と水を合わせて放置するだけで、グルテンが自然に形成されるプロセス。フランス語で「自己分解」を意味します。
  2. パンチ(折り畳み):生地を折り重ねることでグルテンをつなぎ、強度を高める作業。

この2つを組み合わせることで、捏ねる労力を省きながら、しっかりとしたグルテン構造を作ることができます。


2. 準備するもの:材料と道具

成功の秘訣は、正確な計量と温度管理にあります。

クープが開いた黄金色の高加水バゲット
『アトリエキッチン』ムッシュふくし

【高加水バゲット】低温長時間発酵で作る|作りやすい捏ねないレシピ

高加水とは、生地に含まれる水の割合が高いことを指します。このレシピでは加水率78%(水234g/粉300g)です。 高加水パンはモチモチ感が強く、風味豊かで軽い仕上がりが特徴です。
Prep Time 1 hour 30 minutes
Cook Time 4 hours
低温長時間発酵(オーバーナイト) 12 hours
Servings: 2 本分(バゲット1本あたり約270g)
Course: パン
Cuisine: こねない作り方
Calories: 550

Ingredients
  

  • 300g 準強力粉(リスドオル推奨)
  • 6g
  • 1.5グラム ドライイースト(低糖質用)
  • 0.3g モルトパウダー
  • 234g

Method
 

  1. 材料を合わせて生地を作る
    材料を合わせる(ミキシング)
  2. オートリーズ→パンチ入れ2回(折り込み作業)
    パンチの工程
  3. 低温長時間発酵
    低温長時間発酵(オーバーナイト法)
  4. パンチ3回目(復温)
    ラミネーションと復温
  5. 分割・丸め(ベンチタイム)
    三つ折りの工程(丸め)
  6. 成形
    バゲットの成形
  7. 最終発酵
    キャンバス地を作って最終発酵を取る
  8. クープ入れ&焼成(焼き上げ)
    焼成温度
    ①加熱方式:過熱水蒸気で最高温度設定300℃/10分
    ②加熱方式:オーブン(スチームなし)に切り替えて230℃/15~20分
    オーブン内でバゲット生地が窯伸びしている様子

Video

Notes

【推定原価】約70円/本
モルトパウダーとは?
大麦麦芽を粉末状にしたもので、生地の発酵を助け、クラスト(外皮)をパリッと仕上げる効果があります。使用量はごく少量ですが、有無でクオリティに大きな差が出ます。

必須の道具

  • デジタルスケール(0.1g単位で計れるもの)
  • ゴムベラまたはスケッパー(カード)
  • 蓋付きの透明タッパー(発酵具合が確認しやすいもの)
  • キャンバス生地(成形後に生地を並べるための布)
  • クープナイフ(生地に切れ目を入れる専用ナイフ)

3.高加水バゲット作り方解説

STEP 1 ミキシング(材料を混ぜ合わせる)

この段階では「均一に混ぜる」ことが目的です。捏ねる必要はありません。

  1. ボウルに準強力粉とモルトパウダーを入れ、よく混ぜ合わせます。
  2. 塩とドライイーストは、あらかじめ水に溶かしておきます(混ぜムラを防ぐためのひと手間)。
  3. 粉類のボウルに溶かした水を加え、ゴムベラやカードでざっくりと材料全体が均一になるまで混ぜます
  4. 全体がなじんだらラップをかけ、室温で30分間置きます(=オートリーズ

オートリーズのポイント 混ぜた直後は粉っぽく見えても問題ありません。30分後には粉と水が結びつき、グルテンが自然に形成されて生地がまとまってきます。

STEP 2 パンチ(1回目・2回目)

高加水バゲットの生地にパンチを入れる様子

オートリーズ後の生地に「パンチ(折り畳み)」を行います。

手順

  1. 30分後、ボウルの中で生地の端を持ち上げて中央に向かって折り込む「パンチ」を行います。これを4方向から繰り返します。
  2. さらに30分後、もう1回パンチを行います。
  3. 2回目のパンチが終わったら、蓋付きタッパーに移し替えて冷蔵庫へ。

パンチはなぜ重要か? 折り畳むたびにグルテン(小麦たんぱく質が水と結びついて生まれる網目構造)が強化され、発酵で生まれたガスを生地全体に均等に行き渡らせることができます。

STEP 3 一次発酵(低温長時間発酵)

生地を冷蔵庫(5℃)に入れ、12〜16時間ゆっくり発酵させます。これが「低温長時間発酵(オーバーナイト法)」です。

発酵完了の目安: 生地が約2倍近くまで膨らんでいれば完了です。

発酵方法特徴
通常発酵(常温)1〜3時間で完了。時短だが風味は淡白になりがち
低温長時間発酵(冷蔵)12〜16時間かけてゆっくり熟成。旨みと香りが格段に豊かになる
ストレート法とオーバーナイト法の比較

大切な注意点:冷蔵庫の温度を把握していますか? 発酵は「温度×時間」の掛け算です。冷蔵庫内が5℃より高ければ早く発酵が進み、低ければ遅くなります。レシピ通りにならないときは、まず冷蔵庫の実際の温度を温度計で確認してみましょう。

STEP 4 パンチ3回目(ラミネーション)と復温

発酵した高加水バゲットをラミネーション後に復温させる

冷蔵庫から取り出した生地は、冷えて扱いやすい状態です。このタイミングでラミネーション(パンチ)を行います。

ラミネーションとは? 生地を薄く伸ばして何層にも重ね合わせる折り畳み作業のこと。内部の気泡構造を整え、イーストが新鮮な酸素を取り込むことでパンが膨らみやすくなる

  1. 作業台に打ち粉(強力粉)を軽く振り、生地を取り出します。
  2. 生地を薄く広げ、気泡をつぶしすぎないように優しくガスを抜いて折り畳みます(=ラミネーション)。
  3. 容器に戻し、復温(生地の温度が約20℃になるまで) を待ちます。キッチンの温度にもよりますが、1〜2時間が目安です。

ラミネーションだけを見たい方へ

STEP 5 分割・丸め・ベンチタイム

高加水バゲットを分割してから丸める(三つ折り)する様子
  1. 生地を2等分(1個約270g) に分割します。
  2. それぞれを俵型に軽く丸めます(三つ折り)。
  3. 乾燥しないようにラップや布をかけ、最低でも20分間のベンチタイムを取ります。

ベンチタイムとは? 分割・丸めで締まった生地を休ませることで、グルテンがゆるみ成形しやすい状態に戻す工程です。この時間を省くと、生地が傷んでガスの保持力が弱まる。

STEP 6 成形

バゲット特有の細長い棒状に成形します。家庭用の天板サイズを考慮し、長さ30cm程度を目安にしましょう。

  1. 生地を手のひらで優しく押し、ガスを散らします。
  2. 生地を横長に向け、上から下に向かって2〜3回折り込みながら巻きます
  3. 閉じ目(とじ目)をしっかりと指で押さえて留めます。
  4. 手のひらで軽く転がして形を整え、キャンバス生地の畝(うね)の間に置きます

YouTube動画 ➡ バゲット成形だけ見たい方へ

STEP 7 最終発酵

28℃で30分間を目安に最終発酵を取ります。

  • 発酵完了の目安: 指で生地を軽く押し、跡がゆっくりと戻ってくれば発酵完了のサインです。
  • この間にオーブンを「過熱水蒸気モード/300℃」で予熱を開始しておきましょう。

最終発酵で過発酵に注意! 発酵が進みすぎると生地がダレてクープが開かなくなります。指で押したときに跡がほとんど戻らない状態は「過発酵」のサインです。


4. 運命を分ける「クープ」と「焼成」

バゲットの美しさはここで決まると言っても過言ではありません。

クープ入れのコツ

バゲット生地にクープを入れて膨らみをコントロールする重要な工程

クープ(切れ目)は、生地の膨らみをコントロールする重要な工程です。

  1. 発酵が完了した生地を乾かしてから表面に軽く打ち粉をします。
  2. クープナイフで、生地の表面に深さ5mm程度の切れ目を1〜3本斜めに入れます。
  3. クープナイフは素早く引き、切れ目の角度を一定に保つのがポイントです。
よくある失敗原因解決策
クープが閉じてしまうスチーム不足・火力不足過熱水蒸気モード使用(オーブンのスペックにより要工夫)
クープが破れるナイフが鈍い・角度が浅いクープナイフを定期的に替刃交換する
表面が割れる発酵不足または過発酵発酵時間と温度を見直す
焼き上がった状態から推察する失敗の原因とその解決策

家庭用オーブンでの焼成テクニック

成形やクープの技術と同じくらい重要なのが、焼成方法です。ハードパンは「スチーム」の有無が仕上がりを大きく左右します。
多くの家庭用オーブンレンジには、上位機種でなくても「過熱水蒸気」モードが搭載されています。
ここでは、過熱水蒸気モードの使い方を説明します。

手順

  1. オーブンを過熱水蒸気/300℃に予熱します。
  2. 過熱水蒸気モードを使用し、10分間焼きます。(この時間でクープの形が決まる)
  3. 通常のオーブンモードを切り替え、230℃でさらに15~20分間焼成します。途中でバゲットの向きを変えると均一に焼けます。
  4. 焼き上がりの目安は、表面が全体的に黄金色になり、叩くと空洞の音がします。
順番モード温度時間目的
段階①過熱水蒸気300℃(最高温度)10分クープを開かせ、ボリュームを出す
段階②通常オーブン(スチームなし)230℃15〜20分クラストを色よく仕上げ、水分を飛ばす
家庭用オーブンでの焼成テクニック(2段階)

重要:最初の10分間は絶対にオーブンを開けないでください。 膨らみが止まります。

【フランスパン専用】過熱水蒸気の使い方|家庭用オーブンレンジ攻略法


FAQ:よくある質問

冷蔵庫の温度が何度かわかりません。どうすればいいですか?

温度計(500〜1,000円程度)を購入しましょう!高価な物でなくても正確ならOK!
一般的な冷蔵室の温度は2〜6℃ですが、機種や場所によって差があります。

このレシピでは5℃を基準温度としており、それより高い場合は発酵が早く進む傾向があります。温度を把握することで、発酵時間を適切に調整できるようになります。
パン作りを安定させるために必要不可欠な道具の一つです。

クープが毎回うまく開かないのですが、原因は何ですか?

クープが開かない原因は複数考えられます。チェックリストで振り返ってみましょう

  • 成形時に生地の表面をしっかり張らせているか
  • 発酵が進みすぎていないか(過発酵)
  • スチームが十分に発生しているか
  • オーブンの温度が十分に上がっているか(予熱は完全に行ったか)
  • クープナイフの刃は鋭いか(替刃は消耗品です)

一度にすべての原因を解決しようとせず、一回ごとに1つだけ変数を変えて試すことが上達の近道です。

準強力粉がありません。強力粉で代用できますか?

代用は可能ですが、仕上がりに違いが出ます。
準強力粉(フランスパン専用粉)、特に国産は小麦の風味を感じる灰分値が高いものが多く、風味や焼き色がより豊かに焼き上がります。

強力粉は準強力粉に比べてもちっとした食感になり、バゲット特有のサクサクしたクラストが出にくくなる場合があります。
本格的なハードパンの味を追求するなら、製菓材料店やオンラインショップ(富澤商店・コッタなど)で準強力粉を入手することをおすすめします。

まとめ:あなたのキッチンが最高のベーカリーに

高加水バゲットの大きな気泡が入った断面

今回は「低温長時間発酵」「捏ねない製法」を組み合わせた高加水バゲットの作り方をご紹介しました。

さらいの3つのポイント

  1. 「オートリーズ」と「パンチ」で捏ねずにグルテンをつなぐ
  2. 冷蔵庫でじっくり低温発酵させて旨みを引き出す
  3. 過熱水蒸気モードと高温焼成でクープを美しく開かせる

バゲット作りは、最初からうまくいかなくて当然です。でも毎回の気づきを積み重ねることで、確実に上達します。

まずはこのレシピで「捏ねないバゲット」の世界に一歩踏み出してみてください。
焼き上がったときのあの香りと、クープが開いた瞬間の達成感は、何度体験しても格別です。

次のステップとしては、クープの角度をより鋭くする練習や、粉のブレンドを変えるアレンジも楽しいですよ。ぜひ自分だけの「黄金レシピ」を見つけてみてください。


この記事があなたのパン作りのヒントになれば嬉しいです。疑問や感想はコメント欄でお気軽にどうぞ!

コメント欄