【完全版】強力粉で作る捏ねない高加水バゲットの作り方|家庭用オーブンで成功する全工程解説

高加水バゲットというと「生地の扱いが難しくて、いつもクープが開かないし、平べったくなってしまう…」
そんなイメージをお持ちではありませんか?
実は、スーパーで手に入る「強力粉と、ご家庭の「オーブンレンジ」さえあれば、プロ顔負けのバゲットは焼けるのです。

今回は、パン作り初心者から中級者の方に向けて、体力を一切使わない「捏ねない製法」で、外はバリッと、中はみずみずしいバゲットの作り方を徹底解説します。
パン作りへの情熱はあるけれど、忙しくて時間が取れない方にこそ、ぜひ試していただきたい楽ちんレシピです。

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1. 材料と配合:強力粉で作る黄金比

まず、このレシピの最大の特徴は「強力粉」を使うことです。専用粉(準強力粉)がなくても、配合と工程を工夫すれば驚くほど美味しくなります。

【材料(バゲット2本分)】

材料分量役割
強力粉(カメリヤ推奨)300gパンの骨格(グルテン)を形成します。
6g味を引き締めると同時に、生地の弾力を安定させます。
インスタントドライイースト1.5g生地を膨らませる酵母です。少量でじっくり発酵させます。
モルトパウダー0.3g焼き色を良くし、発酵を助け、香ばしさを生みます。
234g加水率78%。みずみずしいクラムを作る鍵です。

Point:加水率78%の「高加水(こうかすい)」に挑戦しましょう。

  • Reason(理由): 水分量が多いほど、焼き上がった際に内部の水分が蒸発して大きな気泡が入り、クラム(中身)がもっちりと透明感のある仕上がりになります。
  • Example(例): 一般的なハードパンは加水率65〜70%程度ですが、今回は78%。生地は非常に柔らかく、手で捏ねるのは困難なレベルです。しかし、捏ねない製法なら、この柔らかさがメリットに変わります。
  • Point(結論): この「少し多いかな?」と思う水加減こそが、お店のような食感を生む絶対条件なのです。

2. 工程解説:捏ねないオーバーナイト製法の全ステップ

① ミキシング:合わせるだけでOK

Point: 材料は「捏ねる」のではなく「均一に混ぜる」だけで十分です。

  • 理由 水と粉が合わさった状態で時間を置く「オートリーズ」という現象を利用することで、捏ねなくても自然にグルテンがつながるからです。
  • 手順: ボウルに全ての材料を入れ、粉っぽさがなくなるまでゴムベラやカードでさっくり混ぜる。たったこれだけで終了です。その後30分間、乾かないように放置してください。
    体力を消費する「こね」の作業は、一切不要。時間に代行してもらいましょう。

② パンチの工程:コシを作る「折りたたみ」

バゲット生地にコシを出すためのパンチ(折りたたみ)作業の様子

Point: 30分おきに、生地を四方から中央へ折りたたむ「パンチ」を2〜3回行います。

  • 理由 捏ねない代わりに、生地を折りたたむことで薄い膜の層を作り、構造を物理的に強化(コシを出す)するためです。
  • 手順 手を濡らし、生地の端を優しく持って上に引き上げ、反対側へ被せる。これをボウルを回しながら一周行います。回を追うごとに、生地がツヤツヤと繋がっていくのがわかるはずです。
    これにより、高加水でもダレない、力強い生地の骨格が完成します。

③ 発酵の見極め:低温長時間発酵(オーバーナイト)の魔法

Point: 冷蔵庫(5℃前後)で、一晩(12〜16時間)じっくりと発酵させます。

  • 理由 低温で時間をかけることで「酵素」が小麦の澱粉を糖に分解し、小麦本来の甘みと、イーストによる複雑な香りが最大限に引き出されるからです。
  • 具体例: 生地が元の大きさの約2倍程度に膨らみ、細かい気泡が均一に入っていれば順調です。
    短時間で膨らませるパンにはない、深いコクと香りがここで生まれます。

④ ラミネーションと復温:生地を目覚めさせる

Point: 冷蔵庫から出した生地を広げて折りたたむ「ラミネーション」を行い、室温に戻します。

  • 理由 生地が冷たすぎると、発酵が思ったように進まず、焼成時に膨らみが悪くなるためです。
  • 手順 作業台に生地を長方形に広げ、縦方向、横方向に三つ折りを2回繰り返します。
    生地が新鮮な空気に触れることで酵母の力が強まり、パンがより膨らみやすくなります。その後は、乾燥しないように20℃くらいまで室温で休ませます。

ラミネーションを動画で見る

高加水バゲットの成形:表面のハリを意識して形を整える手順

⑤ 丸め・ベンチタイム・成形

  • 丸め: 成形を考慮して三つ折り。ここでは力を入れすぎず、生地のガスを完全に抜かないのがポイントです。丸めた生地を乾かないようにして最低でも20分(ベンチタイム)休ませます。
  • 成形: 生地を張らせるように成形し、表面の張りを作ります。家庭のオーブンではバゲットの長さが30㎝を大きく超えるとオーブンに入らないので注意が必要です。

バゲット成形を動画で見る ➡

⑥ クープ入れ:迷わず一気に引く「勇気」

Point: クープナイフを生地に対して45度くらいの角度で寝かせ、スッと一気に引きます。

  • 理由: 焼成時に内部のガスが膨張しようとする力を、クープの切れ目から逃がすことで、パンが破裂せずに開かせる煙突の役割を果たします。
  • 手順: 刃先を3〜5mmほど入れ、ためらわずに早く引きます。ここで必要なのは気合いです。

クープを動画で見る ➡

バゲットのクープ入れ:専用ナイフを寝かせて切り込みを入れる角度の解説

3. 焼成:家庭用オーブンの限界を突破する魔法の設定

ここが一番の難所であり、期待が膨らむ瞬間です。家庭用オーブンのファンの影響で「乾燥しやすい」という弱点を、以下の2段階設定で攻略します。

【プロ直伝の焼成スケジュール】

  1. 第一段階:過熱水蒸気モード 300℃/10分
    • 理由: 蒸気の力で生地の表面を柔らかく保ちながら、最高温度で一気に底上げをします。これにより、クープが「パカッ」と割れるオーブンスプリングが起きます。
    • 具体例: 予熱はしっかり完了させておき、生地を入れる際はドアの開閉を最短時間で行ってください。温度を逃がさないことが重要です。
  2. 第二段階:オーブン(スチームなし) 230℃/15~20分
    • 理由: 蒸気を切り、通常の熱で表面を乾燥させることで、ハードパン特有の「バリッ」とした食感と、食欲をそそる深い焼き色をつけます。
    • 具体例: 残り10分くらいで天板の前後を入れ替えると、焼きムラが防げます。

Point 最初の10分間で「形」を決め、後半の15~20分で「味と食感」を完成させます。 この「高火力+スチーム→高温乾燥」の切り替えが、家庭でプロの味を再現する最大の秘訣です。

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4. 専門用語のミニ解説

  • 高加水(こうかすい): 粉の量に対して水が多いこと。クラム(内層)に大きな穴が開きやすく、しっとり仕上がります。
  • オートリーズ 粉と水を混ぜて、イーストを働かせる前に休ませること。自然に生地が繋がります。
  • クープ: 焼き上げる直前に入れる切り込みのこと。
  • オーバーナイト: 冷蔵庫で一晩かけてゆっくり発酵させること。
  • オーブンスプリング: 焼成の初期段階でパンがグンと膨らむ現象。
家庭用オーブンレンジでスチームを発生させる

5. よくある質問(FAQ)

Q:強力粉(カメリヤなど)で、バゲット本来のパリパリ感が出ますか?

A: 出ます!強力粉は準強力粉よりグルテンが強いので、むしろ初心者の方には成形がしやすく、ボリュームが出やすいというメリットがあります。今回の2段階焼成を行えば、皮はバリッと、中はもっちりとしたベーカリーの食感になります。

Q:過熱水蒸気モードが自分のオーブンにない場合は?

A: 予熱時に天板と一緒に『耐熱容器にタルトストーン』を入れておき、生地を入れる直前にその容器に熱湯を100ccほど注いで「手動スチーム」を作る方法があります。ただし、蒸気による火傷やオーブンの故障には十分注意し、自己責任で!お願いします。

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スチームが必要な理由 ➡

Q:「モルトパウダー」って入れないとダメ?

A: この質問がとても多いです。
モルトパウダーとは麦芽を粉末にしたもので、発酵を助けるほか、ハードパンらしい「キャラメル色」の焼き色をつける役割があります。添加量は微量(0.3g)ですが、あるとないとでは仕上がりが全く違います。Amazon等で数百円で購入できますよ。

モルトシロップも同じ役割ですが、ハチミツのような粘度があり、ご家庭ではパウダーの方が使いやすいと思います。


6. 結論とまとめ

「もうパン屋で買わない」ーーこのタイトルは決して大げさではありません。

ご自身の手で作り上げた、焼き立てのバゲットが放つ香ばしい香り。包丁を入れた時の「ザクッ」という心地よい響き。そして、バターを塗った瞬間に小麦の甘みが広がる一口。これは、手作りした人だけが味わえる至福の瞬間です。

強力粉で作るバゲットの大きな気泡が入ったみずみずしい断面(クラム)

【今回の重要ポイント要約】

  1. 捏ねるな、待て: オートリーズと時間が、捏ねる代わりに生地を作ってくれる。
  2. 強力粉でOK: 専用粉(準強力粉)がなくても、配合(加水率78%)でプロの味に!
  3. 表面のハリが命: 成形時にしっかり張らせることが、クープの成功を決める。
  4. 過熱水蒸気300℃ 家庭用オーブンの最高火力とたっぷりのスチームが仕上がりを左右する。

最初はクープが開かなくても、形が不格好でも構いません。
ぜひ週末の朝、キッチンに広がる最高の香りを体験してみてください。皆さんのパン作りが、このバゲットで劇的に変わることを期待しています!


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