【こねない黒ごまバゲット】クープが苦手な方へ~改善ポイントを説明

美味しそうに焼き上がった黒ごまバゲット

こんにちは!ムッシュです。
製パン講師として、日々ご家庭でのパン作りをサポートしています。

「家で美味しいハードパンを焼きたいけれど、こねる作業が大変」「バゲットのクープ(切れ込み)がいつも開かずにのっぺりしてしまう」と悩んでいませんか?
家庭用オーブンでのバゲット作りは、多くの方がぶつかる壁です。

この記事では、特にクープが苦手な方を対象として、「クープナイフの刃の角度」「クープを入れる前の生地の状態」「手首や肘の使い方」などクープを入れる際の「5つの基本動作」を写真付きで分かりやすく解説します。

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こねないバゲット生地の特徴と魅力

本格的なバゲットを作るために、必死に生地をこねる必要はありません。今回は「オーバーナイト製法」という手法を使います。

1. こねない理由(時間が生地を作る)

パン作りにおいて、生地をこねる最大の目的は「グルテン(パンの骨格となる網目状の組織)」を作ることです。
しかし、小麦粉と水を合わせて長時間置いておくことでも、自然と水和(粉が水分を吸い込むこと)が進み、立派なグルテンが形成されます。
つまり、私たちが汗をかいてこねる代わりに、「時間」が生地をこねてくれるのです。

2. オーバーナイト製法のメリット

  • 小麦の旨味が引き出される: 冷蔵庫で一晩(オーバーナイト)ゆっくりと発酵させることで、酵母が複雑な旨み成分やアルコールを生成し、風味豊かなプロの味に仕上がります。
  • 家庭で扱いやすい: 水分の多いバゲット生地はベタついて扱いにくいですが、この製法は冷蔵庫から出してすぐの生地を冷たいままの状態で作業するため、分割や丸めの難易度がグッと下がります。

黒ごまバゲット:材料(2本分)

まずは計量です。香ばしい黒ごまの風味が食欲をそそる配合にしています。

材料名分量役割・補足
準強力粉300gバゲット作りに適した、フランスパン専用粉がおすすめ。
6g味を引き締め、グルテンを強化します。
ドライイースト2g低糖質用を使います。
モルトパウダー0.3g発酵を安定させ、綺麗な焼き色をつけます。(※必須
216g捏ね上げ温度24℃を目標に調整
いり黒ごま18g煎ったゴマで生地に香ばしさをプラスします。

黒ごまバゲットを美味しく焼くための工程(作り方)

ここからは、仕込みから発酵までの具体的なステップを解説します。

1. ミキシング(混ぜる)とオートリーズ

  1. ボウルに準強力粉、いり黒ごま、モルトパウダーを入れます。
  2. 塩とドライイーストは分量の水で溶かしてから、ボウルに加えます。
  3. ゴムベラなどを使い、粉気がなくなるまでざっくりと混ぜ合わせます。
  4. ボウルにラップをして、室温で30分ほど休ませます。

💡専門用語解説:オートリーズとは?

粉と水を混ぜた後、本格的にこねる前に一定時間休ませる製パン技法です。水和が進み、こねなくても自然にグルテンが形成されやすくなります。

2. パンチ(折りたたみ)で生地を鍛える

生地の端を引っ張りながらパンチを入れる
  1. 30分休ませた後、生地の端をつまんで引っ張り、ボウルの中央に向けて折りたたむようにします。これを一周ぐるりと行い、生地の表面を張らせます。(これが1回目の「パンチ」です)
  2. さらに30分休ませます。
  3. もう一度、同様にパンチを入れます。生地に強い弾力(強度)が出ているのを感じるはずです。
  4. その後、生地を密閉容器に入れ、冷蔵庫(理想は5℃)に移します。

💡専門用語解説:パンチとは?

生地のガスを抜きつつ折りたたむ作業です。こねない製法において、パンチは生地の骨格(グルテン)を強くし、大きな気泡を均一に作るための要となる大切な工程です。

パンチを動画で見る➡

3. 低温長時間発酵(オーバーナイト発酵)

冷蔵庫に入れて12〜16時間、じっくりと低温発酵させます。

翌日、生地が元の体積の約2倍に膨らんでいれば発酵完了です。時間はあくまで目安ですので、目で見て、触って、判断してください。

4. 翌日の工程:復温~成形

  1. 復温・分割: 冷蔵庫から取り出し、最後に軽くパンチを入れたら、室温に置いて生地の温度を「20℃」まで戻します(復温)。その後、2等分します。
  2. ベンチタイム: 軽く俵型に丸め直し、乾燥しないよう20分休ませます。(※ベンチタイム=分割と丸めで傷ついた生地を休ませ、成形しやすくする時間です)
  3. 成形: 生地のガスを優しく抜き、バゲットの形にします。強く叩きすぎてせっかくの気泡を潰さないよう優しく扱い、表面に「張り」を持たせるように巻き込むのがコツです。
  4. 最終発酵(ホイロ): キャンバス布などに畝(うね)を作り、生地を並べて30〜40分発酵させます(28℃前後が理想)。

バゲット成形を動画で見る ➡


この記事のメイン!クープ入れの基本と改善ポイント

最終発酵が終わったらいよいよクープ入れですが、「刃が引っかかる」「生地がべたつく」という方は、以下の5つのポイントを必ずチェックしてください!

① 生地の表面を少し乾燥させる

最終発酵が終わった生地表面がべたついた状態

最終発酵が終わった生地表面のべたつき具合を確認しましょう。指でそっと触って、手に生地がくっつく状態のまま刃を入れると、確実にクープナイフが引っかかります。

扇いで、表面をうっすらと乾かすのが第一のポイントです。30秒~1分間扇ぐだけで劇的に入れやすくなります!

バゲット生地を扇いで表面を乾かす工程

② 打ち粉を活用する

クープの精度を上げるために生地表面に分量外の強力粉を振っている

表面のベタつきを抑え、さらにクープの精度を上げるために、茶こし等で生地の表面に薄く粉(分量外の強力粉など)を振りましょう。刃の滑りが劇的に良くなります。(もちろん、技術に自信がある方は粉なしでもOKです!)

③ クープナイフの刃の「曲げ具合」を調整する

クープナイフの刃を少し曲げて装着する様子

真っ直ぐな刃のまま切るのではなく、クープナイフの柄に対して刃を少し曲げて(しならせて)装着します。こうすることで、生地の皮一枚を「薄く削ぐ」ように切ることができます。どれくらい曲げるかは個人の好みや生地の状態によりますが、自分のベストの角度を見つけましょう。(プロの現場では、刃を極端にU字に曲げて使用することも多いです)

クープナイフの刃を極端にU字に曲げて使用する

僕はこれくらい。ちなみに僕の職場ではもっと極端に曲げてますよ。

④ 刃を当てる「角度」に注目!

パンに当たる刃の角度に注目!パンに対して刃を垂直(90度)に立てて切るのはNGです。
生地に対して約30度〜45度の浅い角度で刃を寝かせ、生地の表面の皮をペラッとめくるようなイメージで刃を入れます。

クープ入れはバゲット生地に対して30度〜45度の浅い角度で刃を入れている

⑤ 手首は固定し、「肘」を引いて切る

手首は固定したまま、肘を動かすイメージで切る。これが最も重要な体の使い方です。
手首をスナップさせて切ろうとすると、深さがまばらになり、線がガタガタになります。

手首の関節はギブスで固めたように真っ直ぐ固定し、肘(腕全体)を後ろに引く力を使って、一気にスッと線を引いてください。ためらわずに思い切りよく切るのが成功の秘訣です。

クープ入れを動画で➡ 


焼成(家庭用オーブンでの焼き方)

オーブンには、生地を予熱する段階から「最高温度300℃」で準備をしておきましょう。

  1. 予熱: 過熱水蒸気モード(スチーム機能)で300℃に予熱します。
  2. スチーム注入: オーブン庫内に霧吹きで蒸気を発生させて、素早くオーブンに入れます。
  3. 前半の焼成:過熱水蒸気 300℃で10分」焼きます。
  4. 後半の焼成: 通常のオーブン機能スチームなし)に切り替え、230℃で15~20分黄金色の焼き色がつくまで焼きます。

💡美味しく焼くポイント:

前半の高温スチーム(過熱水蒸気)は、クープをガバッと開き、表面をツヤツヤでパリッとしたクラスト(パンの皮)に仕上げるために必須です。また、家庭用オーブンは熱風の当たり方にどうしてもムラ(癖)があるため、焼き色を均一にするために焼成途中で天板の前後を反転させる作業が不可欠です。


まとめ

今回の「こねない黒ごまバゲット」を成功させるための重要ポイントを振り返りましょう。

  • オートリーズパンチを活用し、こねる作業なしで強い生地骨格(グルテン)を作る。
  • オーバーナイト製法(低温長時間発酵)で小麦と黒ゴマの豊かな風味を引き出す。
  • クープを入れる際は、「表面を乾かす」「打ち粉をする」「刃を寝かせる」「手首を固定して肘で引く」を徹底する。
  • 高温の過熱水蒸気で焼き始め、後半は温度を下げて中までしっかり火を通す。

クープは一度で完璧に入れるのはプロでも難しい技術です。しかし、理論を知り、体の使い方(手首と肘の使い方)を意識するだけで、見違えるように上達します。

ぜひ挑戦してみてくださいね! 美味しいフランスパンが焼けますように…


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