はじめに
「パンチ」とは、一次発酵中に緩んだ生地に力を加えることで強く安定したグルテン構造を作る目的で必要不可欠な工程です。
特に副材料が入らないリーンなパンにとってこの工程は、生地の弾力や形状を保ち、成形の良し悪しに関わらず、均一で美しいクラム(中の柔らかい部分)に仕上げるための重要なステップです。
また生地量が多い場合には、生地温度の部分的なバラツキが原因で、特定の部分だけ発酵が進まないように発酵を均一化させる役割もあります。
この記事では、パン作りにおける「パンチ」の役割と具体的な方法について詳しく説明します。
パンチの目的は主に3つ
パンチには以下のような目的があります。
1. 生地のガス抜き(ガスの再分配)
パンチは、発酵中に発生する炭酸ガスを適度に抜くことが目的の1つです。
発酵の過程で酵母が発生させた二酸化炭素は、グルテンの網目に閉じ込められて生地が膨らみます。
特に長時間発酵の場合は、そのまま発酵し続けるとガスが特定の部分に溜まり、均一な膨らみを妨げます。
したがって、パンチによってガスを適度に抜き、生地全体に再び均等にガスが行き渡るようにします。
これにより、焼き上がったパンの気泡が均一な内層になるわけです。
2. 生地の強度を高める(グルテンの強化)
小麦粉の主成分であるグルテンというタンパク質が、生地の弾力や形状を保つ役割を果たしています。
このグルテンが一次発酵中に緩んだタイミングで生地を折り込み、強く安定したグルテン構造を作ります。
これは、最終的にパンがしっかりとした形を保ちながら膨らむために重要です。
3. 温度と発酵時間の調整(温度と発酵の均一化)
特に生地量が多い場合、パンチを入れることで発酵を一度リセットします。
これは、生地温度の部分的なバラツキが原因で、特定の部分だけ発酵が進まないように発酵を均一化させるためで、より良い最終結果を得るための重要なステップです。
パンチの具体的なやり方
実際のパンチ入れをYouTube動画で視聴できます。
家庭製パン用とベーカリー用を続けて1分にまとめています!
1. タイミング
パンチは一次発酵の途中で行います。発酵時間の2/3くらいを目安として、
生地が1.5〜2倍に膨らんだタイミングで行うのが一般的です。
【例】一次発酵90分の場合:60分でパンチ
発酵が進みすぎるとグルテンが弱くなり、生地がダレてしまうため、適切なタイミングで行うことが大切です。
2. パンチの入れ方
パンチの目的は単にガスを抜くことではなく、再分配することなので、やさしく扱いましょう!
パンチは次の要領で行います。
①適度に粉を振って~生地を台に移す
手粉の量は加水率が高いほど多くなりますが、台にべったりくっついて生地が傷めてしまうより、
最初から多めに使ってリスクを回避しましょう。
②生地を大きく広げる
③三つ折り、又は半分に折る
④休ませる:パンチ後は、生地を再び休ませ発酵を続けます。
これにより、生地は再びふんわりと膨らみます。
パンチがもたらす効果
1. 美しい気泡構造
特にフランスパンには特有の大きな気泡が生まれ、軽い食感を持つクラム(内側のパン部分)が形成されます。
ガスが均等に分配されることで、パン全体が均一に膨らみます。
2. パリッとしたクラスト
パンチによって生地が強化されるため、オーブンで焼く際に美しいクラスト(外側の皮)が形成されます。
これが、フランスパン特有のパリッとした食感を生み出す要因です。
3. 発酵の安定
生地の温度や発酵具合を均一に保つことで、最終的な焼き上がりが安定し、焼きムラが少なくなります。
まとめ
フランスパン作りにおける「パンチ」は、生地の発酵を促進し、気泡の再分配やグルテンの強化を行う重要な工程です。
適切にパンチを行うことで、フランスパン特有のパリッとした外側と、軽やかな内側が実現します。
パン作りに慣れてきたら、パンチのタイミングや強さを調整し、自分だけの理想のフランスパンを作り上げてみてください。
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