はじめに~酵母の役割
『どんなパンを作る時にも酵母は、発酵や熟成に欠かせない存在です』
その中でも、レーズン酵母は材料が手に入りやすく、初めての方でも発酵プロセスが分かりやすいため、
自家製酵母の中で最も人気があります。
このレーズン酵母を使えば、市販のイーストでは味わえない…
熟成による旨味と芳醇なフレーバが加わり、より美味しいパンに仕上がります。
この記事では『天然酵母パン』を作るために必要なレーズン酵母の起こし方を詳しく、そして失敗しないためのポイントとよくあるトラブル、その対処法までを写真を使って解説します。
レーズン酵母とは?
レーズン酵母とは、
乾燥させたレーズンに付着する天然の酵母菌と野生に生息する菌を培養して増やす、天然の発酵種のことです。
レーズン酵母のメリット
- パンに豊かな風味が付加
酵母が持つ芳醇で複雑なフレーバが加わります。 - 健康面での利点
市販のイーストにみられる、ビタミンなどが添加されていないため、よりナチュラルなパン作りが可能です。 - パンの質感
しっとりとしたクラム(中身)のパンに仕上がりやすくなります。
濃い焼き色に仕上がりやすいのが特徴…
当然、デメリットも押さえておきましょう。
デメリット
- 市販のイーストに比べて
-発酵力が弱く発酵時間にかかる時間が長い。 - 酵母液だけでは発酵力が弱いため
-元種を作る必要がある(さらに3~4日かかる) - 酵母起こしは温度に左右され
-寒い季節には発酵器が必要になる。
ナレーションと字幕で分かりやすい!
レーズン酵母を起こすために|必要な材料と道具
準備するもの
- 材料
- レーズン(オイルコートなし):100g
- 水(浄水):300ml
- 道具
- 清潔な瓶(密閉できるもの):容量900~1000ml 位が望ましい
- 温度計
ー 手順 ー
レーズン酵母を起こす手順は簡単ですが、
細かなポイントを守ることで、より強い酵母を安定して育てることができます。
◆瓶とフタの煮沸消毒
まず、使用する瓶とフタを洗った後に熱湯で全体を殺菌します。
殺菌後はふきんやタオルなどから雑菌が付着するので自然乾燥が望ましい。
◆レーズンと水を入れる
瓶にレーズンを入れ、水を注ぎます。
レーズンはオイルコーティングされていないものを使用!
これはレーズン表面に付着している酵母菌までコーティングされてしまい、呼吸の妨げになるからです。
水道水より浄水を使用することをおすすめします。
水道水には消毒のための塩素が含まれており、有益な菌までも弱らせてしまいます。
食品表示例
◆瓶を閉めてよく振る
発酵のスピードは温度で決まります。
正確な温度を把握して!
適温は25~35℃。ちなみに、4℃以下で休眠状態になります。
1日2回決まった時間に瓶を振り、レーズンと水が混ざるように…
そのうち一回は蓋を開けて、呼吸に必要な酸素を供給しましょう。
酸素は酵母にとって、必要不可欠な栄養なのです。
最適な条件下で、完成までには約5〜7日がかかります。
寒い季節で室温が20℃以下が続くような環境では、
完成までの期間が長くなるので、記録を取って次に起こる変化を予測できるように…
発酵の進み具合を把握する
これから写真で見ていくように、例外なく同じ経過をたどります。
発酵の過程を目で判断できるようになりましょう!
ー 第1段階:発酵初期 ー
レーズンが水を含んで膨らんできます。透明だった水が茶色になってきました。
仕込み当日(左)と24時間後(右)の比較
水の色とレーズンの大きさに注目
さらに進むと、浮いているレーズンが確認できるようになります。
4~5粒ほど水面に浮いている…
ー 第2段階:発酵中期 ー
さらに、栄養が抜けたレーズンは軽くなって浮きます。
もう、ほとんどのレーズンが浮いて…
底に沈んでいたレーズンが軽くなって全部浮いている状態。
この頃からビンの底にオリがたまり始めます。(白い砂のような状態)
このように小さい泡が線になって現れると発砲開始のサインです。
レーズンからポツポツと細かい泡が出始め、水面に上がってくる
さらに進むと…
発砲が激しくなって、ポツポツからブクブクに変化…
発酵の条件が最適な場合(温度・栄養)は、開始から3~4日目で酵母は特に活発に…
ここからの変化が全体を通して一番大きいと言えます。
オリの量もさらに増えて…
レーズンと水面の位置関係に注目!
(右:盛り上がって水に浸かっていない部分も)
この頃は、蓋をしたままでも発砲する音が『シュー シュー』と聞こえるようになります。
ー 第三段階:発酵後期 ー
仕込み量に対してビンのサイズが小さい場合は、外にあふれてしまいます。
念のために、下にバットやタッパを置いてから蓋を開けましょう。
【仕込み量と瓶のサイズ】
・レーズン 100g
・水 300g
※この量に対して、容量900㎖以下のビンはあふれ出す可能性が高い
蓋を開けた瞬間、泡が勢いよくビンの上まで上がってきます。
栄養が抜けたレーズンは軽くなってスカスカになっていきます。
この時が発酵のピークになります。他にも、味や香りオリの量などいろいろな情報を元に発酵を見極めましょう。
もう一日発酵させて完成とします。
発砲はピークを過ぎていますが、オリの量は増えています(写真下)
ラストスパート、オリの量に注目!
右:オリはMAX状態!
これで完成です。
完成した酵母液をレーズンが入ったまま冷蔵し、のちに具材として使う方法もありますが、
作るたびにレーズンを取り除くより最初に漉した方が作業効率が良いので、
次にその方法を解説していきます。
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完成した酵母液を漉す
底にたまっているオリもこすって、最後の一滴まで絞ってください。
シンク用のネットがおすすめ!(100均一で売っているやつです)
- 清潔なザルやあみを使ってレーズンを取り除きます。
漉した後の液体を酵母液と呼んでいます。
一度完成した酵母液は他の発酵食品と同じように腐りにくいですが、衛生面が気になる方は手袋使って進めましょう。 - 完成した酵母液を別の清潔な瓶に移し替え、冷蔵庫の一番冷える場所に保存します。
- 保存期間は長くても1か月をめどに使い切ってください。
時間とともに発酵力は弱くなっていきますが、
ふたを開けて空気を入れ替えると酵母が活性化され、発酵力が持続しやすくなります。
できれば一日一回!
ペットにエサを与える感じ?…でしょうか
よくあるトラブルと対処法
レーズン酵母を起こす過程で、いくつかのトラブルが発生することがあります。
ここでは、よくある問題とその解決方法を紹介します。
酵母が発砲しない
次の原因が考えられます。
◆レーズンはオイルコーティングされていないか? (写真下を参照)
◆使用する水は浄水か?
◆適正な温度を保っているか?
酵母液にカビが生えている・悪臭を放つ
順調に発酵が進んでいる場合、酵母液は弱酸性に近く、他の発酵食品と同じように腐りにくくなっていきますが、そこに至るまでの過程で水面にカビが発生してもすぐに取り除けば問題ありません。
だだし、数日たっても酵母液に発砲する気配がなく、
腐ったような悪臭がする場合は、雑菌が混入している可能性が高まります。
この場合は残念ですが、新たに作り直すことをおすすめします。
パンが膨らまない
酵母の力が弱い、または発酵時間が不足していることが原因です。
パンによっては発酵温度を上げるか、発酵時間を長く取るなどして、酵母がより働きやすい環境を作りましょう。
また、決まった時間に仕上げたい場合は、補助でドライイーストを使用するのも手です。
ドライイーストを0.1~0.2%加えるだけでも発酵が劇的に加速します。
レーズン酵母を使った応用レシピ
レーズン酵母はパン作りだけでなく、他の料理にも活用できます。
いくつかの応用レシピを紹介します。
ピザ生地
レーズン酵母を使って作るピザ生地は、芳醇な香りと濃い焼き色、場合によっては少し酸味が加わります。
パン生地と同じ要領で作れます。オリーブオイルを加えるとフォカッチャにも。
スコーン
スコーンの生地にレーズン酵母を加えることで、しっとりとした仕上がりになります。
発酵時間は短めで、焼き上がりも軽やかです。
クラッカー
サクサクとした軽い食感に仕上がります。
チーズやハーブを加えて、様々なフレーバーを楽しむことができます。
バゲットやパンドカンパーニュをスライスしてお好みの具材を乗せれば、フィンガーフードとしてパーティーやおつまみに大活躍!
まとめ
レーズン酵母は、芳醇な風味と熟成による旨みを持つ家庭製パンの強い味方です。
準備する材料も少なく、手順もシンプルですが、その分、細かなポイントに注意することが重要です。
この記事で紹介した要点を押さえて、ぜひご自身のパン作りに活かしてください。
慣れていない方でも、少しずつ経験を積むことで、理想的なレーズン酵母パンを焼き上げられるようになるでしょう。
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コメント
ぶどう酵母に興味あります望月と申します。
教えていただきたいのです、元種を作ったら、元種からの更新方法を教えてもらいたいのです。
お忙しい中すみませんが、よろしくお願いします。
この記事の後半にかけて、答えが見つかると思います。
https://fukushi-chef.com/motodane/
よろしくお願いします。
ありがとうございます^ ^
やってみます^ ^